愛かわらずな毎日が。

「さっきまで、居ましたよね」


「……え?」


「佐伯さんです」


「……あ、はい」


「訊かなかったんですか?」


「えっと……。一応、訊いたんですけど、」

そう返事をした青山さんのことを責めているわけではない。


「……やっぱり。佐伯さんのことだから、適当に説明して放置していったんですね」


「あ…、いえ。仕事のこととか、他にもいろいろと話をしながらだったので。僕が聞き漏らしたんだと、」

青山さんはそう言ったけど。


佐伯さんのことだから、中途半端な説明しかしなかったに違いない。


「青山さんて、いいひとですねぇ」


「え?いいひと、ですか?」


「そう。いいひと」

物腰の柔らかい青山さんの影響を受けたせいか、ふわふわとした喋り方になってしまった。

私はコホンと小さく咳払いをして、給湯室の中の説明を再開する。


「コーヒーはインスタントしかないんですけど、この棚に。……あ。お砂糖もここです。
カップは洗ってカゴに伏せておいてください。
ゴミは三角コーナーか、このゴミ箱へ」

ゆびで指し示しながら説明する私の隣で、相槌をうつ青山さん。


佐伯さんのあとだからだろうか。

青山さんの真剣な表情ですら、ほっこりするというか、なんていうか。


「そうだ。コーヒー、」


「え?」


「よかったら淹れますけど、と思って」


「お願いしても、いいんですか?」


「いいですよ」


「じゃあ、お願いします」


「ふふっ。わかりました」

< 213 / 320 >

この作品をシェア

pagetop