愛かわらずな毎日が。
「さっきまで、居ましたよね」
「……え?」
「佐伯さんです」
「……あ、はい」
「訊かなかったんですか?」
「えっと……。一応、訊いたんですけど、」
そう返事をした青山さんのことを責めているわけではない。
「……やっぱり。佐伯さんのことだから、適当に説明して放置していったんですね」
「あ…、いえ。仕事のこととか、他にもいろいろと話をしながらだったので。僕が聞き漏らしたんだと、」
青山さんはそう言ったけど。
佐伯さんのことだから、中途半端な説明しかしなかったに違いない。
「青山さんて、いいひとですねぇ」
「え?いいひと、ですか?」
「そう。いいひと」
物腰の柔らかい青山さんの影響を受けたせいか、ふわふわとした喋り方になってしまった。
私はコホンと小さく咳払いをして、給湯室の中の説明を再開する。
「コーヒーはインスタントしかないんですけど、この棚に。……あ。お砂糖もここです。
カップは洗ってカゴに伏せておいてください。
ゴミは三角コーナーか、このゴミ箱へ」
ゆびで指し示しながら説明する私の隣で、相槌をうつ青山さん。
佐伯さんのあとだからだろうか。
青山さんの真剣な表情ですら、ほっこりするというか、なんていうか。
「そうだ。コーヒー、」
「え?」
「よかったら淹れますけど、と思って」
「お願いしても、いいんですか?」
「いいですよ」
「じゃあ、お願いします」
「ふふっ。わかりました」