愛かわらずな毎日が。
「そうだ、」と。
何を思いついたのか、突然、福元さんが口を開いた。
「今から見に行こうか」
「……え?」
顔を上げた私の髪をひと撫でした福元さんが、ふわりと笑う。
「桜」
「さくら?」
「前に、言ってただろ?」
前に?……桜を。
「………あ。」
そういえば。
たしか、桜が咲きはじめた頃。
「散る前に、一緒に見に行けたらいいな」
思わず口走ってしまったのを慌てて取り消したことがあった。
ちょうど福元さんの仕事も忙しくなりはじめていた頃で、無理を言ってはいけないと思ったからなのだけど。
覚えていてくれた、ってこと?
「えっと、」
素直に嬉しいと思った。
見に行きたいとは思う、……けど。
「出張で疲れてると思うし。今日は、」
そのあとに続く言葉を遮るように、私の頭をポンポンと優しく撫でるように叩いた福元さんは、
「一緒にいたいのに」
私の耳元で囁くようにそう言った。
ドクン、と跳ねて。
きゅんと鳴いて。
心臓が悲鳴をあげてしまいそう。
「……ずるい」
顔を真っ赤にした私を見て満足そうに微笑んだ福元さんは、
「青山のことも。昨日会ってた彼のことも。
詳しく訊きたいしね」
いたずらっぽくそう言ったのだった。