愛かわらずな毎日が。
「こら、もも。ニンジン残すなよ」
「いらなーい」
「いらないじゃないだろ」
「ねー。ママは?まだ?まだ帰ってこない?」
「まだだよ。ほら、食べな」
「いつ帰ってくる?」
「さぁ、いつ帰ってくるかなぁ。ホラ、あーんって、」
「んーん。いらないっ」
ニンジンを拒否する娘と、なんとか食べさせようとする父親。
あぁ、なんて微笑ましい。
これがもし、……。
想像しかけてやめた。
ふたりのやり取りを見ながらお茶をすする独身女は、
「もも。ニンジン食べたら、愛ちゃんが公園に連れて行ってあげる」
そう言って姪っ子に微笑みかけるのだ。
「いくー!」
「じゃあ、がんばって食べようね」
「はんぶんで、いい?」
「いいよ。半分はパパが食べてくれるって」
「おっけー」
皿に残されていたニンジンのグラッセにフォークを突き刺した桃奈は、それを小さな前歯で少しずつ削り取るようにして食べはじめた。
時間をかけてようやく3分の1ほど削ったところで、
「パパ、はんぶんこ」
と、真斗の口元に押しつける。
どう見たって半分じゃないよな?と、目で訴えかけてくる真斗に向かって、
「ほら。おくち、あーん」
と口を開けてみせた私は、うさぎのかたちをしたリンゴに手を伸ばした。
あぁ、なんて微笑ましい。
これがもし、……。
そうね。想像するのはやめておこう。