愛かわらずな毎日が。

真斗と同じように緑茶に息を吹きかけた。

そして、記憶の糸を手繰り寄せる。


あの日。私は何を思い、それをどう受け止めたのか。


みつひろが会いに来た日のことを。

思い出していた。



「半年以上も前の話だけど。みつひろがね、報告しに来たの」


「え。なに?いきなりどうした、」


「別れてから、1年と8ヶ月振りに。わざわざ会社にまで来て。それで。
結婚するって、教えてくれた」


「はっ?なにそれ」

怪訝な顔をした真斗が、少々乱暴気味に湯呑みを置いた。

だから私は慌ててフォローする。


「別れた原因が、……なんていうか。まぁ、いろいろあって。それで、私のこと心配してたっていうか。ずっと気にかけてくれてたみたい。
みつひろの中で、会いに行くべきかどうかって、葛藤……みたいなものもあって。だけど。
それでも、会いに来てくれて」


あのとき、私は。


ただただ驚いて。

困惑したけど、懐かしいとも思った。

少しだけ、苦しくて。

でも。

嬉しかった。


そう。嬉しかったんだ。


だから。

「もし、真斗だったら。……どう思う?
昔の彼女が会いに来たら、」

そう訊いたのだ。


「どう思う、って言われても」

腕を組み、しばらく考え込んでいた真斗だったけれど、

「俺のこと忘れられないのか、って。思っちゃうよね、単純に」

そう言うと、ヘラヘラと笑った。

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