愛かわらずな毎日が。
ドンッ、と。
前を歩いていた佐伯さんに勢いよくぶつかってしまった。
「びっ…、くりしたぁ。もーっ。急に止まらないでくださいよ」
佐伯さんの背中に向かってそう言ったけれど、佐伯さんは何も言わずに立ち止まったまま。
ぶつかった拍子によろけた私の腕を掴んでくれた福元さんの、「大丈夫?」という言葉に頷いた私は、佐伯さんの顔を覗き込む。
「どうかしました?」
真っ直ぐ前を見ていた佐伯さんは、
「ん?べつに」
と言って笑顔を見せたのだけど。
私と目が合ったあと、視線をふわふわと漂わせている。
「なんか、へん」
私がそう口にしたときだ。
「そう、ま……」
そんな、少し震えた女の人の声が聞こえてきて。
それに反応するように佐伯さんの眉がぴくりと動いた。
私の心臓がドクンと跳ねた。
「久しぶり、」
その人はそう言うと、一歩、また一歩とこちらに近づいてくる。
痛い。
心臓が、痛いくらいに激しく動く。
だって。
「そう、ま……」と言った。
福元さんのことを、「壮真」と呼んだ。