愛かわらずな毎日が。

下の名前で呼ぶなんて、珍しいことじゃないし。ただの知り合いでしょ。


そう思いたいけど。


「ごめんね。急に、」と。

その人が、申し訳なさそうに笑うから。

ううん。


「申し訳ない」って表情を使って、溢れ出す感情に蓋をするみたいに笑うから。


あぁ、きっと。

この人は、福元さんの。


……どうしよう。


頭の奥がビリビリと痺れて。

のどの奥がチクチクと痛んで。

体じゅうが心臓になったみたいに全身がドクドクと脈打っている。


ジンジンとする目のせいで、驚いた表情をした福元さんが滲む。


私は、どうすればいいのだろう。

どうすれば。


「久しぶりだねー、レイカちゃん」

一歩前に出た佐伯さんが、やけに明るい声でそう言った。


「……うん。久しぶり、だね」

困ったように笑うその人が、助けを求めるように福元さんを見た。

福元さんは。


福元さんは、数秒ほど目を閉じてから小さく息を吐き出して。

そして。

「どうしたの?」

そう訊ねた。


心臓がドクドクとうるさい。


うるさい。

うるさいってば。

< 276 / 320 >

この作品をシェア

pagetop