愛かわらずな毎日が。

「あのっ……、」


思ったよりも大きな声が出てしまって、自分でも驚いた。

三人の視線が一斉にこちらに向けられたから、体がカァッと熱くなる。

視線の先をどこに置いたらいいのか、わからなくて。

それは、まるで枯れ葉のようにはらはらと舞い、足元へと落ちた。


「みなさん、お知り合いみたいなので。私は、ここで。お疲れ様でした。また、月曜日、」

そう言って頭を下げると、駅を目指して歩き出した。

走るとまではいかないけれど、いつもより速く足を動かして。

不自然に見えないように、できる限り速く。


空気の読める女。

理解ある彼女。


三人の瞳には、どう映っただろう。

なんて。


福元さんは気づいてる。

佐伯さんも、きっと。


だって。

「ご用件は?」なんて訊けないし。

ふたりが会話するところも見たくないし。

自己紹介するのも、されるのも避けたいし。

にこにこと愛想笑いなんか、絶対にできないし。


私には、あの場を去ることくらいしか。


もちろん気にはなる。

私が居なくなったあとのこと。


三人は。


福元さんと、あの人は。


首に巻いたストールも、スカートの裾も、後ろに引っ張られているみたいに。

苦しい。重たい。

< 277 / 320 >

この作品をシェア

pagetop