愛かわらずな毎日が。

改札口まであと数メートル。


追いかけてくる。追いかけてこない。

ふたつにひとつ。


福元さんがどちらを選んだとしても、私は涙を流すべきではない。


冷静になろう。

そう。冷静に。

だって。


あの人は、過去の人。


福元さんが追いかけてきても。こなくても。



「待って……、」


改札口の一歩手前で。


「愛ちゃん、ちょっと、待っ、……て」


私の腕を掴んだのは、肩で息をする佐伯さんだった。


「……そっか。その選択肢は、なかった」


「えっ?」


「いえ。なんでもない、です」

私は首に巻いていたストールをずり上げて口元を隠した。


佐伯さんの意志か。それとも、福元さんの優しさか。

どちらにせよ、福元さんは追いかけてこなかった。


ホッとしたのと、ガッカリしたのとがごちゃ混ぜになって。

ただただ、苦しい。


「愛ちゃん。ふたりでなんか食べていかない?」


「…………」


私の両肩をガッシリと掴んだ佐伯さんが、真剣な表情で言う。


「お茶するだけでもいい。とにかく、行こう」

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