愛かわらずな毎日が。
「うっ…、うそっ。なに、これーっ!」
アラームよりも先に響いた彼女の声で目を覚ます。
昨夜の余韻なんてものは微塵も感じられない。
『心地よい目覚め』とは程遠い。
彼女が騒いでいる理由を察知した彼は、
「………しまった。」
ベッドに横になったまま、天井を見つめてそんな言葉を吐き出した。
「ふ、くも、と、さぁん…っ」
彼の名を呼びながらベッドルームに駆け込んできた彼女は、横になったままの彼に勢いよく覆い被さる。
「……お、はよ。朝から賑やかだね」
冷静さを装ってはいるものの、当然、内心穏やかではない。
「だって、…だって、これ。
いつの間に、」
彼に覆い被さっていた彼女が上半身を起こす。
バスタオルを巻きつけただけの彼女の胸元には小さな紅いしるしがあった。
でも。
彼女はそんなことで騒いだりしない。
今にも泣き出しそうな顔の横で、パッとひろげてみせた左手の、その薬指に輝くしるし。
それに気づいたからだ。