愛かわらずな毎日が。
「素直によろこべば?」
小さな弁当箱を占領していた卵焼きを箸でつまむと、それを私の口の前まで持ってきた香織。
「わーい。素敵な出会いだってー。やったー」
気持ちなんてまったくこもっていないセリフを吐き出したあと、遠慮なくその卵焼きをいただく。
「この味、やっぱり好きだわ」
口の中に広がるふんわりと柔らかな甘さを堪能していると、
「出会いがあったとしても気付いてないだけじゃないですか?間宮さんて、なんかこう、ボーッとしてるというか。なんていうか、」
森下が人差し指を顎にあててそう言った。
「あはは。わかるわかる」
香織がウンウンと頷く。
なにそれ。ひどくない?
「ちょっと。悪いけど私、ボーッとなんて、」
「いいですか?」
「………え?」
「待ってるだけじゃダメですよ。ボーッとしてると、いつの間にかコレ」
そう言って森下がサンドイッチからしなびたレタスをつまみ出した。
「レタス……?」
「レタスがどうかしたの?」
さっぱり意味のわからない森下の言動に、私も香織も首を傾げた。
「挟んだときはパリパリだったのに、時間が経つとこんなになっちゃう。
間宮さんも、気付いたときにはこうですよ」
森下がつまんでいたそれを香織の弁当箱の空いてるスペースに落とすと、
「ちょっとーっ!なにすんの。やめてよ」
香織が慌てて箸でレタスをつまみ上げた。
「…………」
口を半開きにしたままの私に向かって、
「ってことですよ。理解できました?」
森下が得意げな表情をしてそう言った。