王子様のしつけかた☆
chapter1
-*- 比奈 -*-
「比奈ー。今日も一緒に帰るぞ」
一ノ瀬くんは相変わらずかっこいい。
夏休みが終わって2週間だから、また始
まった学校にも慣れた。
ただ、休み前と変わったことといえば、
彼氏ができたこと。
「おい、聞いてんのか」
ふいに、手首をつかまれた。
「あ、ごめん。いこっか」
部活の帰りだったから、もう7時くらい
だった。
少し薄暗い程度で、まだ外は明るい。
これで彼と一緒に帰るのは、何回目だろ
う?
なんとなく、まだ慣れなかった。
一緒にいるのは、すっごく楽しいけど、
まだ名前もちゃんと呼べない。
「今日は寄り道なしな。最近部活長くて
比奈も疲れてるだろ?」
「え?全然大丈夫だよ!どうせマネは
記録だけだし」
一ノ瀬くんはつかんでいたあたしの手首
を引いた。そして、顔を近づけた。
「昨日、授業中寝てた」
真顔だ。
「み…見られた…」
「比奈、いつも寝ないのに。寝てた。あ
んま無理すんな」
心配してくれてるんだ。
なんだかすごくうれしかった。
「ありがとう。じゃあ今日は早く寝る」
あたしがそう言ってにこっと笑うと、一
ノ瀬くんはあたしの頭を抱き寄せて言っ
た。
「それでいい」
あたしは慌てて言った。
「あ!一ノ瀬くん、ここ玄関だよっ?
誰かに見られちゃうよ!」
すると、ちょっと怒った顔をして、
ポカっと頭をたたかれた。
「気にしてねえし。あと、名前」
「え?」
「名前で呼べ」
「あ…」
「無理か?」
あたしはうつむいた。
「慣れなくて…。なんか、その、恥ずか
しい」
「じゃ、罰ね」
彼はあたしの頬に軽くキスした。
「え…!ダメだってば!」
そう言いつつ、うれしくてたまらなかっ
た。顔が熱くて、思わず顔を彼の胸に押
し付けた。
「なんだ、本当はうれしいんだろ?バレ
バレ」
「…意地悪」
そんなことを言いながら、私たちは歩き
始めた。