スノードーム




私の真横でぴたりと近づいてきたその足音が止んだ。

カタン、とカウンターに手をついた音が耳の近くでやけに大きく響く。


そして、その場で紡がれた言葉に確信せざるをえない。




「俺のこと、避けてる?」




なんで。ナンデ。



(何で、先輩がここにいるの)




思い出すのは最後に先輩を真っ正面から見たあの日。

先輩の目に女として映らないのだと知ったあの日。


じわじわとあの日の記憶が蘇る。


また、何か言われるのだろうか。

今度こそトドメを刺されるのだろうか。


心臓がバクバクと音を立てて、息が苦しくなって。


今すぐにでも此処から逃げ出したい衝動に駆られているのに、体は一歩も動かなかった。




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