スノードーム




だから、たとえ胸が締めつけられるくらい切なくても。

私にはこの瞬間が幸せなんだ。




「もうー!先輩のせいで髪ぐちゃぐちゃになったじゃないですか!」


「ははっ!悪い悪い。やりすぎた」




そう口では言いながらもその顔はまったく反省を見せず笑っている。


そして今度はさっきの乱暴な手つきが嘘のようにゆっくりと髪を梳かしてくれる先輩の手。



それがまるで大切なものを触るみたいに優しくて。



外はこんなにも寒いのに、先輩の手が触れたところだけは火傷するくらい熱く感じた。


本当、私も相当重症だと思う。




< 32 / 200 >

この作品をシェア

pagetop