スノードーム
「えー!涼司先輩ひどーい!!」
「ちょっ、おい理名(リナ)!!」
一つは私が呼べない名前を当たり前のように呼ぶ、高く可愛らしい声。
もう一つは聞いただけで心拍数が上がり脈が乱れる、絶対に私の名前を呼ばない声。
誰なのかなんて考えなくてもすぐに気付いた。
そしてその予想は一ミリも外れることはなく。
少し先の十字路から出てきたのは先輩と……その彼女である野球部のマネージャー。
「まつやんも可哀相だよねぇ…あんなに付き纏われちゃって」
「根が優しいだけに強く言えねぇしな」
見えるのは先輩の腕に自分の腕を絡ませている彼女と、顔を真っ赤にしている先輩。
こちらには気付いていないらしい。