スノードーム




「…どうした"カンナ"。カバンも持たねぇで」




器用に私の体勢を戻しながら尋ねてくる塚田先輩。

低いその声は怒りを含んでいて。

でもそれが私に向けられているわけじゃないことも何となく長年の経験でわかってる。


そしてそこで初めて自分がカバンも何も持っていないことに気付いた。


これじゃあ帰るに帰れないじゃないか。


でも、教室に取りに戻りたくはない。

まだ先輩がいるかもしれないあの教室には。




「…………」




その思いを言葉に出来ず俯きながら塚田先輩…ヨシくんの服を掴めば、何かを悟ったのかポンポンと私の頭を撫でてくれるヨシくん。




「カバン、俺が届けてやるから先に帰れ」




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