青空
―1―
サワサワと風に揺れる草花。
木の葉のすき間から見える、青く澄みきった空。
キラキラの木漏れ日。
セミの鳴く声。
大樹は、一人になれるこの神社が好きだった。
友達と遊ぶのは楽しいし、騒がしいのも好きだが、ここで、こうして一人でいるのは、それ以上に好きだ。
「あら? 先客がいるの?」
木陰になっている、神社の裏に寝転びながら、セミや鳥の声を聴いていたら、それより綺麗な声が聞こえた。
驚いて飛び起きると、そこには、青い目をした女性がいた。
「こんにちは」
柔らかい微笑みに、大樹は一目で恋をした。
「こ、こんにちは……」
反射的に挨拶を返すが、どこの誰だか分からない女性と、どう接したらいいものか考える。
「そこは君の場所? 私も、気に入ったんだけど」
「え? あ、いいよ」
そこ、と指差されたのは、ちょうど大樹のボロボロになったランドセルが置かれていた場所だった。
大樹は、すぐにランドセルをどかす。
明日から念願の夏休みで、学校帰りに寄り道をした。
「ありがとう」
女性は微笑むと、そこへ座って本を読み始めた。
カバーがしてあって、大樹には題名は分からなかったが、大樹の姉が持っている文庫本と、大きさや形が似ていた。
大樹は再び寝転んで目を閉じた。