青空
いつの間にか寝てしまった大樹は、自分のくしゃみで目が覚めた。
目を擦りながら体を起こすと、読み終えた本を横に置いて、赤く染まった空を見てる女性がいた。
「おはよう」
大樹に気付いた女性が、クスクスと笑いながら言った。
大樹は、恥ずかしくなり、顔が赤くなった。
「私はそろそろ帰るけど、君はどうするの?」
「……オレも帰るよ」
もともと、こんな時間までここにいるつもりはなかった。
大樹は、母に怒られる覚悟を決める。
「ねぇ、お姉さん。またここに来る?」
大樹がランドセルを背負いながら、女性に聞く。
“また、会いたい”
そう思った。
「うん、来るよ」
「じゃあ、また会えるね!」
大樹は嬉しくて、笑顔で言った。
女性は驚いた顔をしてから、微笑んで「そうだね」と言った。
「オレ、大樹! お姉さんは?」
また会える喜びで、そのまま名前を告げる。
女性の名前も聞くと、女性は上を指差した。
「?」
その指につられ、大樹も上を見る。
「美空」
その名前を聞いて、上を指差した意味を理解した。
“上”じゃなく“空”を指差したのだ。
女性によく似合う名前だと思った。