ナイショの恋を保存中!~クールな彼の恋人宣言~
「楓ちゃん……ごめんなさい……」

「つき合っているの?」

「……うん」


一瞬、楓ちゃんの瞳が揺れたかと思うとすぐに伏せられ、再び笑顔をこちらに向ける。


「そうだったんだ」


無理矢理に作った笑顔にわたしの胸はぎゅうっと締め付けられた。


「ごめんなさい」

「ううん。謝らないで。じゃないと惨めになるから」

「楓ちゃん……」

「それじゃあ、あたしはここで。お疲れ様でした」


細く透明な声が扉の向こう側に落ちて消えた。

浮かんでくるのは楓ちゃんの悲しげな顔。

必死になにかを打ち消そうとする健気な姿が瞼に残って離れない。
< 178 / 311 >

この作品をシェア

pagetop