ナイショの恋を保存中!~クールな彼の恋人宣言~
「図面ありがとな」

「ううん。お仕事だから」

「でも大変だったんだろ?」

「そうでもないよ」

「うそつけ!」

「ふふっ」


そして倒れた脚立を直して、飛んでいったヒールの靴をヒロくんが拾い、ほらと言って靴を差し出す。


「ありがとう」


手を伸ばして受け取ろうとする。でもヒロくんは渡してくれない。

おかしいなと思って固まっているとつま先に靴を寄せた。


「自分で履けるから」

「いいから出せって」


履かせてくれるの?

なにを考えているのかわからないヒロくんに戸惑いつつ、そっと右足を差し出した。

でもくすぐったくて。


「あっ…」


変な声が出てしまった。

ヒロくんの手がストッキング越しに触れてもどかしいような感覚。昔のわたしだったらこんなふうに思わなかったのに。

大きくて日焼けした手の甲、節ばった指を意識してしまう。

ゆっくりと脚のかかとに触れる指はやさしく、つま先がヒロくんの触れる指先に反応して力が入ってしまった。


「なに、感じた?」

「まさか!」

「でも、顔がそう言ってる」

「そんなことあるわけないよ。いじわる言わないで!」

「ばか、冗談だって。ほら、そっちの脚も」


でもヒロくんの言う通りかもしれない。

2年半ぶりに男の人に触れた。身体の中でくすぶっているなにかを感じてしまう。
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