【B】明日は来るから 【優しい歌 外伝】






親友たちを送り出して、
小父さんの遺骨の前で座る恭也。





そんな恭也を後ろから包み込む。




私にはこんなことしか出来ない。


貴方の辛そうな苦しそうな背中を
ちゃんと受け止めて見つけて、
こうやって私の全てで
抱きとめることしか出来ない。





貴方が暗闇を彷徨うなら、
その隣を私も歩くから……
だから一人で苦しまないで。




貴方がいる世界なら、
どんな暗闇も寄り添いたい。




それが私の想いだから……。





小父さんの葬式から二日後。


恭也は何時ものように、
病院へと出勤した。





医師不在の多久馬医院の入り口の前には、
本日の診療は終了しましたの立札と、
恭也の文字で綴られた、

『一身上の都合で休診中です。
 ご迷惑をおかけします』

っと貼り紙が貼られていた。









この周辺は病院が少ない。


だからこそ、小さくても
この多久馬医院の存在は
地域住民には大きく根付いていた。


その医院が休診中の今、
住民たちからも、
若先生の恭也君を求める声が聞こえる。




多久馬医院の事。
今の職場の事。




恭也には、普段の日常が始まった
今でも、その日常は少し今までとは違っていて
見ているだけで不安になる。




そんな恭也を一番近くで支えたくて、
ここ数日は、小母さんの看護と家事を手伝いに
多久馬家で過ごしていた。



小父さんの死から一ヶ月ほど過ぎた頃、
文香から一本の電話が入る。





「神楽、恭也君大丈夫なの?」

「恭也は頑張ってるわよ。

 でも張りつめた糸が、途切れてしまった時が
 不安になる」

「だけど今がアンタも正念場。

 ちゃんと、恭也君の心をケアして
 一緒に幸せな未来掴みなさいね。 

 ただ少し気になる噂を聞いたの」



文香は勿体ぶったように告げる。



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