【B】明日は来るから 【優しい歌 外伝】
7.父の計画(ゆめ) -恭也-
父の死から一月ほど経った頃、
俺は心臓外科の教授から呼び出しがあった。
昇進じゃねぇ?
そう言わんばかりの同僚からの視線を集めながら
向かった先には、黒服を来た見慣れない男が数人。
「失礼します。
西宮寺です」
俺が入ったその後からは、
救命の教授をしてる勇生の父親。
「わざわざ、ご足労頂きました。
西宮寺教授」
そんな風に言いながら迎え入れた。
緊張感が一気に増した空間。
その部屋で、
俺は教授に指示された場所へと腰かけた。
「多久馬君、こちらに居るのが
祐天寺の会長。
祐天寺久信(ゆうてんじ ひさのぶ)君。
私の友人だ。
今日は久信から君との面会の時間を
都合してほしいと頼まれてね」
教授はそうやって話を切り出した。
思わず、祐天寺さんと紹介されたその人を見つめた後、
この中で唯一、話しやすい勇生の父親へと視線を移す。
「祐天寺です。
君が恭也君だね。
多久馬恭真先生に、やっぱり良く似ているね」
そう言う風に話しかけてくる
祐天寺さんの話し方は独特だ。
柔らかな口調ではあるものの、
どんなに柔らかい口調で話していても、
何処か上から目線。
俺のことも、
試すように見られている感が払いきれない。
「祐天寺、回りくどい。
建設中の総合病院の事だろう」
そう切り返したのは、
今までここに、座っていた勇生の父親。
建設中の総合病院?
何の話だよ。
突然、湧き上がった出来事に
俺はその中に入り込めないでいた。
「総合病院?」
やっと思いで言葉に出来たのは、
この僅か四文字の漢字。
「あぁ、恭真と私の夢でね。
私も次の教授選で、大学病院を離れて
恭真と私たちの病院を作りたいなと話していた」
勇生の父親の言葉が、
あまりにもデカすぎて
言葉を失う。
「多久馬君、君がびっくりするのも仕方ない。
ただ亡くなられたお父上は、
多久馬君の為にもこの夢を成しえたかったんだと思うが」
教授が言葉を続けた。
親父が総合病院?
親父が?
多久馬医院で、
アットホームでフレンドリーな関係を
患者さんたちと構築していた親父。
地域密着型だと
自分の信念を曲げることがなかった親父が
総合病院?
いやっ、だけど……
親父はこうも言ってた。