【B】明日は来るから 【優しい歌 外伝】



丘の上に建設中の総合病院。




だけど恭也がまだ話してくれない今、
私が勝手に、ここで聞いていいわけじゃない。



そのことがずっと気にかかりつつも、
踏み出すことが出来ないまま
私は、恭也のお母様の介護を手伝いながら
多久馬家を中心と生活をしていた。




六月も下旬に差し掛かった頃、
レッスンを終えて教室を出た私の前に、
ツカツカっと押し寄せてきた女の人に
私は頬を思いっきり打たれた。



バッシーンっと
大きな音が教室内に響いていく。



「アナタね。

 私の恭也君を奪う泥棒猫は」


そう言って私を罵り続ける彼女の行動に、
私は罵られる理由も感じられない。



何?何?っと集まってきた野次馬。






「お客様、大変申し訳りませんが
 他のお客様のご迷惑になります。

うちのスタッフの結城が何か
気に障ることでも致しましたでしょうか?」




ビシっとスーツを決めた責任者が
駆け付ける。



「結城先生、貴方も謝って」



強引に押し切られるように強要される謝罪。



「すいません、彼女とは仕事ではなく
 プライベートな件のようです。

 少し休憩ください。
 話し合ってきます」


口早に伝えると、
講師用のスタジャンを脱いで
私は財布を掴んでお店を出て行く。



「ごめんなさい。

 仕事の邪魔になるので、
 仕事場には今後は来ないでくれるかしら?

 知っての通り、まだ私仕事中なの。

 次の予約が30分後に入っているから、
 30分しか時間がないけど、
 それで足りるかしら?」



そう言いながら、彼女
同じ商店街沿いの喫茶店へと連れて行く。



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