【B】明日は来るから 【優しい歌 外伝】
その時から、
神楽さんを正面からまともに対峙することが出来ない。
俺自身にやましいところがあるから。
「恭也、今日仕事後、飲みに行くぞ。
冬生は美雪に頼んだ。
雄矢も合流するから、強制だからな」
そう言って廊下の擦れ違いざま、
勇生が夜の日程を詰め込んできた。
夜の日程が詰まらなければ、
このまま大学で一晩過ごすだけだった俺には
勇生の申し出は、ある意味逃げ道で。
だけどその後、
突然の来客によって、
俺はまた少し浮上した感情が沈んて行くのがわかった。
勝手知ったる職場。
相手は教授の知人の娘。
勤務中にも関わらず、
突然、訪ねてくる訪問者。
祐天寺氏と、その娘の訪問によって
俺は再び、教授の部屋へと呼び出された。
「失礼します。
多久馬です」
そう言って部屋をノックして
扉を開けると、
祐天寺親子と教授が俺を迎え入れる。