【B】明日は来るから 【優しい歌 外伝】



「多久馬君、そこに座りなさい」


教授に指示された場所へと座ると、
すかさず、祐天寺氏の娘が
俺の方へと近づいてくる。


「恭也君、これが私の娘。
 昭乃だ。

 どうだ?妻に似て容姿は申し分ない。

 娘も恭也君の話をしたら、
 受け入れてくれた」


受け入れてくれた?


この発言は何処か威圧的で、
俺がこの申し出をキャンセルすることすら
全くないと言う自信さえ感じさせられるほど
傲慢さを感じずには居られなかった。


「ご無沙汰しています。
 恭也さま?

 覚えてらして?」


父親の態度とは真逆に、
娘の方は何度か俺を知っている素振りで
馴れ馴れしく話しかけてくる。




覚えてらして?


何処かで俺は彼女にあっているのか?



その返答に答えることは出来なかったが、
彼女と祐天寺氏の勢いは凄まじく、
押し切られる形で、
俺はその後のスケジュールを押し込まれた。


それはある意味、教授命令でもあって
その指示に逆らうことは、
ここで研修を続けることも出来なくなる。



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