【B】明日は来るから 【優しい歌 外伝】
何時ものように病院に押しかけて来た
祐天寺昭乃は、
仕事中の俺に近づいてきて
こう続けた。
「恭也さま。
私、妊娠しました」
微笑みを携えながら告げた
その言葉に、
俺は真っ白になる。
祐天寺昭乃と言う婚約者が出来てからも、
俺とアイツは
そんな関係になったこともない。
アイツは何度も何度も求めて来るが、
俺自身が何度もそれを拒否し続けた。
俺が体を重ねるのは、
後にも先にも……神楽さんただ一人。
あの人が俺の愛する
ただ一人の女性だから……。
だから祐天寺昭乃が妊娠するなんて
ありえない。
何言ってるんだ……。
そう続けようと言葉を発しかけた時、
祐天寺昭乃の指先が
俺の口を塞ぐように口元に縦に伸びてくる。
そしてアイツは更に顔を近づけて、
耳元で続けた。
「お父様には貴方の子供だと報告しました。
お父様はとても喜んでくれたわ。
勿論、恭也様も喜んでくださいますわよね。
お腹のこの子の誕生を」
そう言って祐天寺昭乃は、
更に俺の手を掴んで、
自身の妊娠していると言うお腹に
手を触れさせた。
そんな行為が、
益々、俺自身の嫌悪感を募らせていく。
「その子は……」
言いかけた声をアイツの唇が俺を塞ぐ形で
封じられて、違うっと言う声は
心の中に閉じ込められる。
俺は……。