【B】明日は来るから 【優しい歌 外伝】





神楽さんのことを調べたい……。





ただそれだけの想いが、
俺をドアノブに手をかけさせる。




「いらっしゃいませ」



入室した途端に、
声をかけてくる教室のスタッフ。



「すいません。
 以前、此処の生徒だった多久馬といいます。

 結城先生は?」




怪しまれないように、
そうやって問いかける。




自分の担当のインストラクターに会いに来た形をとると、
怪しまれることなく、教えてくれると思ったから。




「結城先生の生徒さんでしたか。
 結城は、異動で他の教室担当になりました。

 お稽古の再会を希望でしたら、
 こちらで別のインストラクターを紹介しますが」





神楽さんが異動?







俺を忘れるために、
自分から距離をとった?






それとも……
俺が知らないところで、
また祐天寺の力が働いた?




そんな予感だけが
脳裏を過っていく。






「あの?多久馬さま?」

「あっ、すいません。

 近くまで来たので、
 結城先生に会いたかっただけなんで」



そう告げて、
教室を後にした。



胃が……
シクシクと痛む。




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