【B】明日は来るから 【優しい歌 外伝】
16.離れられない -神楽-
目が覚めたら……
そこは私の知らない病院で、
白衣に身を包んだ人が、
目を閉じて、
言いにくそうに告げた。
『お腹の中のお子さんは、
助かりませんでした』
突然告げられた言葉に、
頭の中が真っ白になった。
私の中に……
恭也の子供が居たの?
その命に私は、
気が付いてあげることもなく
終わらせてしまったの?
その事実を告げられた時、
涙すら出なかった。
その時、傍に居てくれた
文香は無言で私を抱きしめた。
二日くらいその後は、
入院させられて、
私はその病院を退院した。
入院していた病院が、
恭也の友達である、
雄矢君の実家の病院だったと知ったのは
白衣姿の彼を見てから。
「今日、退院なんだ……。
神楽さんから、
恭也に言わなくていいの?」
雄矢君にそう言われて、
私はゆっくりと頷いた。
もう祐天寺さんと
結婚してしまった恭也だから……。
今更、気が付いてあげることも出来なかった
お腹に宿っていた命のことを
伝えるなんて出来なかった。