【B】明日は来るから 【優しい歌 外伝】
約束の五年にはなるけど、
彼はまだまだ忙しそうだから。
必死に頑張る、
恭也の足枷には
なりたくないって思った。
だけど……突然、私に襲う
悪阻は……
不自然な形に恭也の目には映ってしまう。
もしかしたら気が付いてるかもしれない。
それでも……
恭也が踏み込んでくるまで
私からは、お腹の子供のことについては
話せないって決めた。
妊娠を知ってから、
恭也君との時間を続けながら
ずっと考えてた。
それはこの子が大きくなりだす頃。
私の中でお腹が目立ち始めるかなって
思えた頃に、
恭也の前から姿を消そうって。
一人で生きていくのは怖いけど、
今は、お腹の中にこの子がいる。
愛する恭也の子供を
もう一度失うなんて耐えられないから。
お腹が目立つ始めてしまうと、
ここに居たら、
祐天寺さんに知られてしまうかもしれない。
そんな風に感じた。
その日まで……許される時間まで、
恭也の温もりを感じて、
恭也の甘い声を刻み込んで
この先の未来を歩き抜くための
この子を守り抜くための力を充電する。
その間に、恭也が踏み込んで来たら
その時は……
彼の望むようにしたいと思った。
二人で居る時間。
どう頑張っても、
悪阻の苦しみを隠し続けることなんて
出来なくて、トイレに駆け込むことも多かったけど
それでも恭也は……
自分から私のテリトリーに
立ち入ってくることはなかった。