【B】明日は来るから 【優しい歌 外伝】




「雄矢、悪い。
 
 妹の恋華(このは)ちゃんの力を貸してほしい」

「恋華の?」


「あぁ、神楽が消えた。

 俺の子供が居るはずなんだ……」


「神楽さん、話したのか?」

「雄矢……。
 知ってたのか……。
 知ってたならどうして?」

「見かけたんだよ。

 ウチの産婦人科の待合に居た
 神楽さんを。 

 まぁいい、恋華に連絡して
 伊舎堂(いさどう)の力が借りたいってことだよな。
 
 わかった、政成(まさなり)君に頼んでみるよ」

「頼む……」







雄矢に一気に告げると、
今度は、勇生の方へと電話をする。





「バカやろう。

 幸せになるんだろう?
 してやるんだろう?

 ったく何やってんだよ。

 神楽さんを探し出せ。
 倒れても探しだせ。

 小母さんのことは
 ちゃんと親父たちに頼んでおく。

 神楽ちゃん、妊娠してるんだろう?

 だったら無理なストレスで
 救急搬送されることもあるかも知れない。、

 先に消防に連絡して手をまわしておく」






すまない。




俺の弱さから、
妻と言う存在がありながら
俺がただ救われるためだけに
君を利用し続けた。


五・六年間と言う猶予(時間)を
作って。

それでも……
今も俺は、神楽さんを迎えに行けない。

幸せにしてやれない。





想えば……
昨日の神楽さんは様子がおかしかった。



いやっ、彼女の様子がおかしいことに気がついたのは、
もう少し前だ。



たびたび、
ハンカチで口元を抑えることが増えた神楽さん。




それは……確実に
俺の子供が彼女の中に宿ったのだと
感じ取った。





だが……彼女は、
その事実を何も告げてくれない。



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