【B】明日は来るから 【優しい歌 外伝】
そして君は……
全てを告げずに
俺の前から消えていく。
俺の弱さも責めることなく、
ただ全てを独りで抱きしめて。
街の中を走り続けて、
向かったのは神楽さんが過ごす
おばあさんの家。
通いなれたその場所の門は、
固く鎖で閉ざされて
無情にも売り物件として
不動産の看板が立てかけられていた。
思わず、
その不動産屋の番号へと電話する。
そこで知り得た話では、
その家を売りたいと言われたのは一か月前。
そして一昨日、荷物を出した後彼女は大切な家を
不動産屋へと売却した。
全ては俺を断ち切る為?
その後も、俺はその家近くの人に
何度も彼女の消息を訪ねて歩いた。
もう何処をどう歩き回っているのかすら、
俺自身はわからない。
何度も何度も、彼女のテリトリーである場所を
彼女の姿を探してさ迷い歩き続ける。
「すいません……
この子、知りませんか?」
携帯画面に映し出した彼女のに写真を見せながら
何度も何度も訪ね歩く。