【B】明日は来るから 【優しい歌 外伝】




「そっか……。

 あっ、一月。
 助けて貰ったとき、センター前だったよね。

 大学は?」

「志望校に合格しました。

 だから、来たんです」








彼女が振り返りながら語った
出逢った季節。





あの出会いの時が、
俺のセンター試験前だったってことを
彼女は覚えてくれてた。





それが何故かとても嬉しかった。




興味がなかったら、
そんな言葉出てこない。




「少し待っててね。

 体験レッスンしていくんでしょ。
 教室、何処が開いてるか
 確認してくるわね」




そういって彼女は、
スタッフと話し始めた。



「恭也くん、
 こっち来てくれる?」




彼女が俺の名を呼ぶ。




しかも……苗字ではなく、
名前で……。






それだけでドキドキしてるよ。





おかしくなったテンションのままに、
招き入れられた防音室。





ガチャリと重いドアが閉められた途端に、
外の音が全て遮断される。





外が丸見えのガラス越しの防音室。



何故か……
緊張してしまっている俺。。



会話……。
なんか、会話しなきゃ。



「ねぇ?
 あの後、足すぐに治ったの?」


何言ってんだよ……。


足なんか、
安静にしてたら治んだよ。


「えっ、えぇ。

有難う。
あの時は助かったわ」



びっくりしたようなトーンで
切り返した言葉は、
何処か上から目線の物言いで。


「それより……
 今日はどうして?」



やっぱりそうだよなー。




俺がこんなところにいる理由、
普通は気になるよな。



貴女に逢いたくて。





理由と言えばそうなんだけど、
そんなこと言えるわけないよなー。



そんなこと言った暁には、
変質者かストーカーだよな。


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