【B】明日は来るから 【優しい歌 外伝】
*
ごめんね……。
お母さんの我儘で、
お父さんの居ない子にしてしまって。
でも……
お母さんはね、お父さんの未来を奪うなんて
出来ないの……。
あの人が……
貴方のお父さんが、
貴方のお祖父ちゃんから受け継いだ思いを
願いを叶えて欲しいから……。
貴方は決して、望まれないままに
宿った命じゃない。
貴方の存在を知ったら
恭也君も、小父様も、小母さまも喜んでくれたはず。
こんな形じゃなかったら……。
ごめんね……。
*
就職先を探しながら、
新しい町をゆっくりと歩く。
この先……私は、
この子と二人でちゃんと生きて行かないといけない。
先の見えない不安が
私の足をすくませる。
無意識にお腹に手を添える。
公園のブランコに座って、
地面に足をついたまま
ゆらゆらと揺りかごのように揺らす。
「こんにちは。
大丈夫ですか?」
そうやって声をかけて来たのは、
私よりも少し年下のように感じる
お腹が膨らんだ妊婦と思われる女性。
「すいません。
わざわざ気にかけてくださって」
「失礼ですけど、妊娠中ですか?」
その女性は突然、
そんなことを言いだした。