【B】明日は来るから 【優しい歌 外伝】






ごめんね……。


お母さんの我儘で、
お父さんの居ない子にしてしまって。


でも……
お母さんはね、お父さんの未来を奪うなんて
出来ないの……。





あの人が……
貴方のお父さんが、
貴方のお祖父ちゃんから受け継いだ思いを
願いを叶えて欲しいから……。




貴方は決して、望まれないままに
宿った命じゃない。


貴方の存在を知ったら
恭也君も、小父様も、小母さまも喜んでくれたはず。




こんな形じゃなかったら……。



ごめんね……。








就職先を探しながら、
新しい町をゆっくりと歩く。



この先……私は、
この子と二人でちゃんと生きて行かないといけない。





先の見えない不安が
私の足をすくませる。




無意識にお腹に手を添える。



公園のブランコに座って、
地面に足をついたまま
ゆらゆらと揺りかごのように揺らす。





「こんにちは。

 大丈夫ですか?」




そうやって声をかけて来たのは、
私よりも少し年下のように感じる
お腹が膨らんだ妊婦と思われる女性。




「すいません。
 わざわざ気にかけてくださって」

「失礼ですけど、妊娠中ですか?」




その女性は突然、
そんなことを言いだした。


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