【B】明日は来るから 【優しい歌 外伝】
今まで住んでいた祖母の家とは違った
地域の絆の形を感じられる子の場所で
私は臨月を迎えて出産。
真人(なおと)と名付けた我が子は、
今年の誕生日で4歳になろうとしていた。
真人よりも3か月早く生まれた
倫華さんの長男、
瞳矢(とうや)君は一足先に4歳。
同い年なのに、しっかりものの瞳矢君は
何処か、真人のお兄ちゃんみたいだった。
私の仕事の間は、
真人の事は倫華さんが預かってくれていた。
駐輪場で自転車に乗って、
真人の待つ、倫華さんの家へと向かう。
途中、和羽ちゃん、瞳矢君、真人へと
明日のおやつを購入して。
自宅に自転車を止めて、
勝手口を抜けて、
檜野家へ向かう。
チャイムを鳴らすと、
バタバタっと駆け出してくる真人。
「ママ」
小さな手でギュっと抱きついて
甘える真人を両手で抱き上げる。
「お帰りなさい、神楽ちゃん」
「ただいま。
真人、いい子にしてた?」
「いい子だったわよ。
瞳矢と一緒にロボットで遊んで、
一緒にお昼寝して」
「優典(まさのり)さんは?」
「お父さんは、和羽とお出掛け中。
何でも明日の工作の準備で、
木の根っこを用意しないといけないらしくて、
探しに行ってるわ」
そう言って倫華さんは笑った。
「今日、ご飯もう作ってるの。
良かったら、一緒に食べて行って。
って言ってもビーフシチューなんだけどね」
「だったら、これ。
店長に貰ったお惣菜をお裾分け」
そう言って私は、真人をゆっくりとおろして
晩御飯の準備に取り掛かる。