【B】明日は来るから 【優しい歌 外伝】
お風呂の中で疲れて
眠ってしまった真人を抱えて、
パジャマに着替えさせると、
ゆっくりと私の布団の中に寝かせる。
柔らかい髪を撫でて
そのまま額にキスをすると
一冊の本を鞄から取り出す。
私に関係あるわけじゃないのに、
恭也君が出ているからと言うだけで
購入してしまった、
サイエンス系の雑誌。
本に映る彼の顔を指先で撫でながら
その記事を追いかける。
*
恭也君
元気そうで良かった……。
私も元気よ。
真人が少しずつピアノ上手くなってきてるのよ。
何時か真人も、
私たちの大好きな『愛の夢』にこめられた
想いを気が付いてくれるかしら?
*
生きることにいっぱいいっぱいだった私と真人を
この町の人たちは、優しく支えてくれた。
この町を選んだから、
私たちは此処まで生きて来れたのかもしれない。
そんな風に思えた時間。
今も貴方を思い続ける心を
湖に沈めて、
私は真人と前を向いて歩いて行くから。
前を向いていれば、
明日は必ず来るから。
真人の隣、
ゆっくりと体を横たえて
明日に向かって動き出す。
夢の中だけでも、
貴方に出逢えますように。
そんな祈りを込めて。