【B】明日は来るから 【優しい歌 外伝】
「多久馬さん。
ご無沙汰しています」
そうやって近づいて来た彼女は、
俺の傍で信じられないことを告げた。
祐天寺の今回の企業買収は、
祐天寺を失墜させるために
背後から操られた謀で
その裏には、
暴力団が深く関わっていると言うことだった。
祐天寺をスポンサーに持つ
冴香さんが、もう何年も気にかけていた
不安ごと。
それが今になって、動き出したのだと
彼女は怯えるように伝えた。
その夜、入院中の病院から
義父は忽然と姿を消す。
警察にも協力を求めて、
義父を探し回るも、
二か月後、無残な姿で土の中から見つかった。
連絡を受けた俺は、
昭乃を連れて、警察へ向かう。
そこで対面したのは、
損壊が進んだ義父の遺体。
異臭が鼻につく、
その遺体を見て、
その場で昭乃は発狂しながら失神した。
冴香さんの言葉が
俺の中に強く残る。
義父は、暴力団に殺されたのか?
口封じのために?
用済みの為に?
そんな疑問を抱きながら、
その後も、祐天寺を立て直すだけに
奔走し続けた。