【B】明日は来るから 【優しい歌 外伝】
5.心に残る存在(ひと) -恭也-
「遅くなった。
勇生、あがっていいぞ。
後はやっておくよ。
たまには早く帰って、
冬生の相手してやれって」
「おいおいっ。
もうそんな年じゃないよ。
アイツは。
子供がデカくなるのは早いんだよ」
そう言って勇生は
自分のデスクで作業を始めた。
病院を軌道にのせる。
俺たちの夢を掴み取るために
犠牲になったのは家族たち。
沢山の患者の未来を繋ぐことが出来た
親父たちの夢の代償の大きさを
後から気付かされる。
勇生を頼りにしすぎて、
アイツとアイツの大切な家族のことを
どれだけ思ってやることが出来ただろう。
あんなに幼かったアイツの息子は、
そうだった……。
もう大きくなってたんだな。
勝矢ですら……
もう中学生なんだ。
そのまま椅子に体を沈めて
ゆっくりと首をまわしながら
モニターを見つめる。
そのまま画面を見つめながら
明日、手術予定の患者さんのデータを
じっと見つめる。