【B】明日は来るから 【優しい歌 外伝】
俺が得ることが出来なかった
幸せの形を奪っていく病変を見つめながら
脳内で明日の手順と工程を
シュミレーションしていく。
黙々とそんな時間を過ごしているうちに、
気が付いたら、
今日も日付が変わりかける時間になってた。
「恭也、そろそろ帰るか?
美雪がなんか、作ってるだろう。
お握り、お茶に健康食品のスティックバー。
ほどほどにしとけよ」
そう言って、俺の引き出しに隠してあった
それらのものを
机の上に出して溜息をつく勇生。
そしてアイツは呟いた。
『神楽ちゃんがいたらなぁー』っと
声にならない声で。
「さて、明日のオペは4件だろ。
どんだけ詰め込んでんだよ」
「当初は6件だった」
「2件減らしたからマシだって?」
勇生はそんな憎まれ口を叩きながら、
帰宅準備をする。
日付が変わった頃、
俺は勇生に誘われるように
アイツの愛車に乗り込んで、
勇生のマンションへとお邪魔した。
深夜の来訪にも関わらず、
美雪さんは、
俺を笑顔で迎え入れてくれる。
「恭也くん、ゆっくりして行って。
忙しいからって、
お茶とお握りだけじゃ体壊すわよ」
そう言いながら、
テーブルに次から次へと手料理を並べる。