【B】明日は来るから 【優しい歌 外伝】




「はい。
 多久馬です」




ゆっくりと声を発して
相手の声を待つ。




「恭也……君……」





小さく呟いた彼女は、
電話の向こう側で
泣きなから助けを求める。




すぐにでも
抱きしめたい衝動にかられながらも、
俺と彼女を繋ぐのは
この電話のみ。



電話の向こう、
彼女が泣き止むのを待ちながら
時間だけが過ぎていく。



「真人を助けて……。
 私の宝物を……生きがいなの……」



ようやく話せる状態にまで
落ち着いた彼女が声を震わせながら
小さく告げた。




こうなった今でも、
俺の子供だとは一言も言わない
神楽さん。





もう少し甘えてくれてもいいのに……っと
思いながらも、
こうやって俺を頼って電話してきてくれた
現実が不謹慎にも少し嬉しかった。





「もう心配しなくていいよ。

 明日も俺は動けないけど、
 そっちに勇生を迎えに行かせる。

 今日中に手配しておくから、
 明日には転院出来るように
 神楽さんもしておいて」




そう言うと電話の向こうで小さく頷いて
有難うと彼女は呟いた。








明日……
久しぶりに彼女と再会する。





そして……彼女が託してくれる
真人(我が子)と向き合う日々が始まる。





今も心に残る愛しい存在(ひと)。


君を幸せにすることは
出来なかったけど、
君の生きがいを奪わないように
俺も頑張るから。


君の笑顔が見たいから。




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