【B】明日は来るから 【優しい歌 外伝】
君は多分……
俺の子なんだ。
神楽さんさえ望めば
俺は君を……。
眠りつづける男の子の髪を
何度も撫でながら、
初めての対面を果たした。
その眠りつづける男の子から、
俺と神楽さんの面影を見つけ出したくて。
暫く真人君の眠るベッドサイドの椅子に腰掛けて、
対面時間を過ごすと、我に返ったように
現在のバイタルを確認する。
とりあえず……
今のところは安定してる。
明日から手術に向けての最新の状態を知りたくて、
検査が始まる。
検査の後は、
今は無理をさせないために薬をいれて休ませているけれど
少しだけ、抜いて様子を見てみたいと思った。
普段の真人君を少しでも知りたくて。
この状態なら、
それが叶うと思えたから。
それは医者としての判断とは
決して言えないかもしれない。
だけど医者としての関わり方のほかにも、
きっちりと俺自身として
関わりたいと思うエゴ。
今も安定して眠る真人君の傍を離れて、
もう一度彼女が眠る傍へと戻って
ベッドサイドに腰を下ろした。
もう一度、こんな風に
同じ時間が交わるとは思わなかった。
君はもう、新しい家庭を持って
幸せに過ごしているとばかり思っていたから。
それとも……
あの男の人とは、結婚していたけど別れたの?
溢れだす質問は、
俺の中で膨らんでいくけれど
その疑問を必死に俺の中に押しとどめながら
彼女の傍に座り続けた。
座り続けたと言えば聞こえはいいけど、
本当は俺自身が動けなくなってた。
今もこんなにも彼女に
振り回されてしまう俺自身。
ふいに暗闇で、
もぞもぞと体を動かした彼女が
真人君の名前を呼びながら
慌てて体を起こす。