【B】明日は来るから 【優しい歌 外伝】



脈の触れ方は昨日より強いから、
血圧は少し落ち着いたかな。

100をきってることはことはないだろう。
貧血の方も、昨日よりは緩和してそうだし
ストレスの方は、まだ難しそうか。


そんな状況を読み取りながら、
ゆっくりと神楽さんに触れていた指先を離した。




「昨日より落ち着きましたね。

 でもまだ無理はさせられませんから、
 ここに居る間は、
 神楽さんも俺か勇生の指示に従って貰います」




神楽さんを縛りつけるみたいで
抵抗はあったけど、
これくらい言わないと
彼女はすぐに無理をしてしまうから。




ある意味、うちに転院を判断してくれた
松崎の判断は正しかった。


あのまま、何も知らされずに向こうで
真人君の治療だけを続けていたら
神楽さんの心と体が
壊れてしまっていたような気がして。



俺がこうやって、
再び彼女に交わるのも、
神様がくれたチャンスみたいなそんな風に思えた。




「私も……従うの?」




そうやって切り返した彼女に、
俺は黙って頷く。


それくらいで威厳を演出しないと。




彼女の中の俺は、
何時までも年下の俺だから。



守りたくなる存在。





確かに今までは
そうだったかも知れない。


だけど今も昔も、
彼女が守るべき存在だから。


少しは認めさせないと。
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