【B】明日は来るから 【優しい歌 外伝】
サンドウィッチを掴んで、
先に食べながら彼女を見ると
神楽さんは
ゆっくりと最初の一口を食べた。
だけど食事をするテンポは遅い。
ストレスから
食欲がなくなっているのかも知れない。
そう感じながらも、
少しでも食べて貰わないと
彼女も倒れてしまうから。
今は心を鬼にして
それを見届ける。
全部とはいかなかったけど、
二切れのサンドウィッチを食べ終えた彼女は
もう食べれないとばかりに
両手をあわせた。
本当は全部食べて欲しかったけど、
いきなり食べると
胃もびっくりするかも知れない。
この状態だと、食事も喉を通らずに
真人君に付き添っていたような印象が強いから。
食べ終えたものを全て紙袋に片づけると、
8時が近づこうとしていた。
「仕事に戻るよ。
また様子を見に来る。
朝の配薬で、神楽さん用の薬も処方しておくから
飲んでおいて。
今日から真人君の検査、本格的に始めるから。
仕事の後、案内するよ。
神楽さんが滞在する部屋に」
そう言うと俺は、
後ろ髪をひかれながら
病室を後にした。
彼女との再会が、
俺に新たな希望をくれる。
あの日、断たれてしまった
その時間をもう一度、
取り戻すための希望。
君の笑顔を
取り戻して見せるから。
だからもう一度、
俺の傍で笑って。
俺が強く惹かれて安堵した
その想い出笑顔を
もう一度、取り戻してほしいから。