【B】明日は来るから 【優しい歌 外伝】




小雨の中、頭にハンドタオルを被って
一気に『チェリー』まで駆け出した。



いくら駅から近いとは言え……
雨に濡れると、
それなりにズタボロになるわけで。





『チェリー』のドアを一気に開けて、
駆け込むと……
店内に居る男性陣からの視線が
集まった気がした……。




顔を俯けながら、
頭に乗せていたハンドタオルを引きづりおろしながら
店内をキョロキョロ眺める。





……文香……
まだ居ないじゃん。                                                                                                                                                                                                                                                                                    







合コンかな?っと
思われるメンバーが集まってる場所には、
数人の男の子と女の子が集まってる。





その中で……
見つけてしまった……。






友達らしい男の子とじゃれてる、
あの恭也君の姿……。






やっぱり……
彼女いるのかも。








来るんじゃなかった……。







文香も見つけられないし、
そのまま女子トイレへと直行する。






この服装は変えられないけど
せめて……雨に濡れて、ボロボロになった髪と
落ちかけのメイクくらいは手直ししなきゃ。




他の子と一緒に居るとはいえ、
恭也くんが気が付いてくれた時に、
ズタボロすぎるのはあまりにもみっともないもの。





洗面所の鏡に向かって、
メイクを治し終えて、
ゆっくりと髪をまとめなおす。






……気が重いなぁー……。





なんて思いながら、
女子トイレを出てフロアーに向かった。





「いらっしゃいませ」


キョロキョロとしてる私に、
『チェリー』のスタッフが声をかける。



「あっ……。

 まだ友達が来てなくて……」





タジタジになって声がどもってる私に、
今度は別の方から声がかかる。




「君、神楽ちゃん?
 文香の友達の?」



その声が聞こえた方には、
あの恭也君たちのグループ。




えっ?




今日の合コン相手って……
文香、恭也くんたちだって言うの?





がっくりと肩を落としながらも、
逃げ出すに逃げ出せない。




そして18時を少し過ぎた今も、
文香はまだ着いてない。







……もう嫌だ……。



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