【B】明日は来るから 【優しい歌 外伝】



朝、病室を抜け出して一日の勤務に集中する。

今日は連続してオペの予定が詰まっているから、
神楽さんのもとを訪ねることも出来ない。

そのまま夜まで、オペ室で過ごして
最後の患者を送り出した後、
俺は着替えて雄矢の家へと向かった。


雄矢の家にはすでに、
勇生が顔を見せていた。


雄矢の二人の息子もまた、
勇生の息子のように大きく成長していた。



応接室に通された時に擦れ違った、
二人の少年は、
会釈をして別館の方へと向かっていく。



「勇人、千尋。

 21時くらいにお夜食持っていくわね。
 無理せずに勉強頑張るのよ」


二人の背中に声をかける、
リズ夫人。


「お腹すいたらおりて来るよ。
 なぁ、勇人」


振り返って、リズ夫人の色素を受け継ぐ
千尋君が答える。


「あらあらっ。
 
 本当に大きくなったら、
 可愛げがなくなったわ。

 小さい時は、お揃いの服を着せて
 たまに可愛らしい色の
 お洋服も着こなしてくれせてたのに。

 お洋服、作るの楽しかったけど
 男の子服は、退屈。

 女の子だったら、
 もっとレースを沢山つけて
 ひらひらに出来て可愛いのが
 いっぱい作れたと思うのに」


そうやって肩を落とすリズ夫人。


「さぁ、どうぞ。

 恭也さんは、お食事されました?
 主人も今からですの?

 良かったらご一緒に」


そう言うとリズ夫人は
俺を応接室に案内して、
キッチンへと姿を消していく。
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