【B】明日は来るから 【優しい歌 外伝】



「雄矢?
 恭也の想いに反対?」

「やるしかないだろう。

 恭也一人に、任せられないだろう。
 こいつ、この手の事は疎いから」

「なぁ、雄矢。
 神楽さんのドレス、リズちゃんに作って貰えないかな?

 まぁ、神楽ちゃんだけに真っ白なドレス着せて
 隣に誰もいないって言うのは可哀想だよな。

 俺や雄矢がたっても、奥さんの頭から角が生えそうだし
 やっぱ、神楽ちゃんが喜ばないだろうしな。

 ってことで、神楽ちゃんの隣にはお前な。
 1日だけの家族になるんだろ。

 恭也」


そう言うと勇生は、俺の背中をバシンと叩く。


何時しか応接室へと入って来ていた
リズ夫人は、俺と勇生を見てクスクスと笑う。


テープルに3人分の晩御飯を並べながら
リズ夫人は呟く。



「主人から伺いました。

 レースを沢山使って、
 素敵なドレスを作るわ。

 恭也君、楽しみに待っていて」


そう言うと、ふんふんっと鼻唄を口ずさみながら
リズ夫人は、応接室を出て行く。



親友たちの協力を得た秘め事。



その最後の仕上げに、
真人君の存在は欠かせない。




だけどその結婚式に、
真人君を立ち合わせることは出来ない。


だからこそ……
神楽さんにその存在を感じて貰える
空間を作りたい。



その日から、魔法が解ける
別れの日まで、
俺たちは身も心も家族になるのだから。




翌日、真人君の病室に顔を出すと
彼はゲームをする手をとめる。


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