【B】明日は来るから 【優しい歌 外伝】
その後は、退院の日に向けて
真人の洋服を買いに出掛ける。
沢山の思い出を形に残したいと思ったから、
真人用にデジカメも購入する。
そうして迎えた退院前夜。
遊園地を翌日に控えた真人は
とても嬉しそうだった。
「真人君、明日楽しみにしてる」
「うん」
何時もの様に真人の様子を見に来てくれた
恭也君は、
そうやって明日の約束をもう一度確認するように真人に告げる。
二人で肩を並べて病室に出た後、
彼は私に向き直って静かに告げる。
「神楽さん、明日真人君は退院だ。
遊園地の翌日は、
向こうへ帰ってしまうだろ。
今晩だけ、少しでいいんだ。
君と過ごす最後の時間をくれないか?
連れて行きたい場所があるんだ」
そうやって囁く甘い声。
そんな恭也君の魔法に吸い込まれるように
気が付いたら頷いていた。
「何処に行くかは内緒だよ」
そう言ってその後は、
アイマスクで目を隠されたまま
手を引かれて出掛けていく。
促されるままに車に乗って、
訪れた何処かわからないその場所で
私はアイマスクをゆっくりと取られた。
目前に広がるのは、
ずっと憧れ続けた純白のドレス。
「どうして……」
立ち尽くして言葉よりも
涙が溢れだしていく私。
「恭也君が計画したのよ。
ドレスのデザインはリズちゃん。
ほらっ、花嫁さんが泣いてちゃダメでしょ。
一晩だけの夫婦に
神様の前でなるんだから。
もう一度、歩き出すために」
美雪さんはそう言って、
私の涙をハンカチで抑えてくれる。