【B】明日は来るから 【優しい歌 外伝】



「ティアラと、ベールどちらがいい?」


そう言って見せられるのは、
どちらも憧れた花嫁さんの必須アイテム。


「ベールが嬉しい」


そう告げると、リズさんと美雪さんは瞬く間に
私の準備を進めていく。


ドレス用の下着にコルセット。

全てリズさんが手作りで作ってくれたらしい
パニエ履いて、ドレスを着付ける。


ふんわりと広がっていくラインは、
優しい甘い時間。


髪型をセットするのは、
美雪さん。

そしてリズさんに仕上げて貰うメイク。


鏡映る私は、
何処から見ても幸せな花嫁以外の何物でもなかった。



「うん。
 綺麗よ、神楽さん。

 はい、最後にウェディングブーケ。

 このブーケは、
 造花だから決して枯れることはない。

 この時間の二人の想いを
 ずっと抱いたまま、
 神楽さんを守ってくれるはずだから。

 同じ花の小さな飾りを、
 恭也君にも身に着けて貰う。

この花たちが、二人の時間を知ってるから」


そう言って、
ゆっくりと手に握らせてくれた。





「美雪、リズちゃん
 神楽ちゃんの準備は出来た?」


そうやって姿を見せた勇生君。


勇生君もまた、
純白に包まれた私を見て、
笑いかけてくれた。



ゆっくりと控室のドアが開く。


三人に連れられて向かう先には、
花婿姿に身を包んだ恭也くん。

その隣には、
雄矢君が付き添っている。



「神楽さん」



差し伸ばされた手をゆっくりと掴む。



飴色の分厚い扉が開かれると、
聞きなれたピアノの音色が
その部屋の中を包み込んでいく。




……真人……。



「協力して貰ったんだ。

 僕が演奏したいからお手本が欲しいって」


私の隣、
一歩ずつマリア像の元へと赤い絨毯を
ゆっくりと歩きながら紡ぐ恭也の声。




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