【B】明日は来るから 【優しい歌 外伝】

20.別れの朝 -神楽-





カーテンの隙間から差し込む
朝陽に導かれるように
ゆっくりと目を開ける。


目を開けた正面には、
すでに起きている恭也君の姿があった。




「起きてたんだ」

「うん」



そう言って切り返した彼だけど、
その返事のニュアンスで、
彼は一晩中、眠ることがなかったのだと
感じ取れた。



「朝ご飯は、10時までだったよね。
 まだ6時頃だから、もう少し休もう?」


わざと、そうやって彼に声をかける。



朝が来て欲しくないと
何度望んでも、
朝はやってくる。



やってきた朝なら、
せめて……僅かな時間も
近くに寄り添って居たいから。



大きな掛布団をもう一度、
三人全てを覆うように、かけなおして
お互いの体を寄せるように
もう一度眠りに入る。



次に目が覚めた時には、
川の字で眠っていた真人が
すでにベットから這い出して、
鞄から取り出したゲームを楽しんでた。




「真人……」

「ママ、おはよう。

 パパ、まだ眠ってるよ」


そう言って切り返された真人の言葉に、
徹夜で起きていたであろう、
彼が僅かな眠りについたとことに安堵した。



「そうね。
 恭也先生、まだ眠ってるわね」


わざと……恭也君の存在を
距離を感じさせる状態で伝える。



彼は、昭乃さんと勝矢君が待つ
家庭に帰る存在。



真人のお父さんは仕事が忙しくて
帰ってくることがない人だから。



恭也君は、貴方の父親にはなり得ないのよっと
真人が現実を受け入れられるように。


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