【B】明日は来るから 【優しい歌 外伝】
そんな言い方をした途端、
真人は手にしていたゲーム機を置いて
恭也君が眠るベッドへと駆け出して
彼の隣に潜り込んだ。
鏡台に置いた携帯の時計は、
8時半になろうとしていた。
「恭也君、真人。
朝ご飯、食べに行かないと……」
ご機嫌斜めの真人。
私の声で、
目を覚ました恭也君。
恭也君が真人に接するのは、
昨日の延長戦の時間で、
私一人、必死に距離を保とうとしてる。
着替えを済ませて、
鞄に荷物を詰め込む。
帰り支度を済ませると、
朝食のチケットを手にして、
バイキング形式のレストランへと向かった。
「おはようございます」
レストランのスタッフがチケットを回収して、
テーブルへと案内する。
テーブルに、簡単な手荷物を置くと
飲み物を最初に用意して、
そのまま、それぞれが
欲しい朝ご飯をお皿へと思うだけとっていく。
真人は相変わらず、
恭也君にべったりで、
懐く真人の世話を恭也君も
甲斐甲斐しくやいてくれる。
テーブルで一人で待ってた私に、
トレーを手にして、
恭也君の後ろを、ついてまわる真人。
そんな真人の姿を見つめながら、
私は一人、
心が苦しくなる。
彼を一途に思うがゆえに、
今まで気が付こうともしなかった
私と昭乃さんの争いの為だけに
誕生させられて、
父親に愛されることなく育ってきたであろう
勝矢君。
勝矢君に対して出来る
最後の謝罪の形。
その足枷を私は、
愛しい真人に押し付ける。