【B】明日は来るから 【優しい歌 外伝】
ごめんなさい。
幸せにしたいはずの貴方が
私の愛の本当の犠牲者。
貴方のお父さんは、
私の意志で、
手の届かないところにしてしまう。
だけど……
この温もりだけは、
ほんものだから……。
彼が貴方に向ける眼差しも、
優しさも、言葉も、息遣いも。
何もかも一瞬一瞬を
貴方の心の中に刻み付けて
とどめるの。
多久馬恭也。
目の前に居るその人こそが、
真人、貴方の本当の父親。
父の温もりを
今、一生分貴方の中に刻み込んで。
そんな風に思わずには
居られなかった。
「神楽さんは何食べる?」
ボーっと考えている間に
すでに席に戻って来た真人は
コーンスープを
美味しそうにスプーンで飲んでた。
恭也君の声に、
自分で取りに行こうと立ち上がると
彼は、それを黙って制した。
「シリアルとサラダ。
後は……、ヨーグルトとかフルーツがあれば」
「了解。
とってくるから」
そう言うと、恭也君は再び
料理が並ぶその場所へと戻っていく。
彩鮮やかなフルーツ。
少し甘めのシリアル。
春雨やきくらげが入った
中華風サラダ。
そして注文以外の、
スクランブルエッグに、
ウィンナー。
少しずつ盛られた
お皿が私の前にゆっくりと置かれる。