【B】明日は来るから 【優しい歌 外伝】
「さて、頂きます。
真人もちゃんと言ったか?」
恭也君が言った途端に、
手にしていたスプーンをすぐに置いて
恭也君を真似て、頂きますをする真人。
そんな二人に続いて、
私も両手をあわせて、小さく唱えた。
こうやって三人で朝ご飯を食べるのも
最初で最後。
今、どんな些細な出来事も
三人で過ごした時間は、
真人にとってはかけがえの宝物。
私にとっては、
この先の未来を歩き続けるための
糧となるのだから。
食事の後、自分たちの部屋に戻って
チェックアウトの
時間までゆっくりと過ごす。
11時。
チェックアウトの時間に、
私たちはそれぞれの荷物を手に家族ごっこを楽しんだ
ホテルの部屋を後にした。
この後、私たちは
新幹線で……懐かしい、
あの場所へと帰る。
ホテルのエントランス。
車の置いてある
駐車場へと戻ろうとする恭也君。
恭也君と離れたくなくて
後を追いかける真人。
そんな真人の腕を慌てて掴むと、
真人は反抗的に体をバタバタさせて
抗議していく。
それでも……貴方を
彼の元に行かせるなんて
出来ないの。
「神楽さん。
駅まで送るよ。
ほらっ、真人君……
先生のところまでおいで」
恭也君はその途端、
昨日とは違う呼び方で、
真人と接し始める。